ご相談: 気に入らないと噛む犬
私の家ではゴールデンレトリバー3歳(オス・去勢済み)のロンを飼っています。
でも、家庭での事情があり、しばらく知人の家に預けていました。2ヶ月位です。
その家は昔小型犬を飼っていたこともあり、家族の人も優しくて面倒見がよかったのでお願いしました。
(中略)
でも、その家族から私の家に帰ってきたら、気に入らないことがあると私達飼い主を噛むようになってしまいました。
私達家族が食事をしている時に、テーブルに顔をつっこんでくるようになり(目の前で盗んだりは今のところしません)、爪を切ろうとしたりお風呂に入れようとする時に嫌がって噛みます。
ロンは、子犬の頃は甘噛みがありましたが、特に大人になってから人間に歯を立てるようなことはありませんでした。気に入らないことがあっても、いやな顔はしますが(笑)、噛んだりしませんでした。
でも今回は、血が出るほど歯を立てて噛んだんです。これには私達家族も驚いてしまって、どうして良いのか本当に困っています。どうしたら元のロンに戻せるでしょうか?
良い子だったゴールデンを他の人の家に預けたら、性格が変わってしまって人間を噛むようになってしまったというペットのご相談をSさんから頂きました。
Sさんからの初めのメールだけでは、そのお友達のご家族がどのようにロン君と接していたのか分からなかったので、隊長の部下からいくつか質問をし、何度かメールのやり取りをさせて頂きました。
その質問内容とSさん家族の接し方・お友達ご家族の接し方の違いがいくつか分かったので、そこから説明しますね。
1. 犬の寝る場所はどうしていましたか?
■Sさん: 寝室の床に犬用のふとんをしいて、その上で寝かせた
■知人: 奥さんのベッドに上がって足元で寝ていた
↑知人の奥さんは、Sさんに言われたように床に寝せようとしましたが、ベッドの上に上がったロン君がベッドから降りてくれず、仕方なくベッドの上の足元で寝させていたとの事でした。小型犬を飼っていたときも一緒に寝ていたこともあり、特に強くしかったりしなかったそうです。
これは、知人の奥さんがきちんと叱ってベッドから降ろすべきだったのでは、と思います。犬が「こうしたい」という事が間違っているのに、そのままにしていたので、犬は「自分がしたいようにしていいんだ」と感じ始めてしまったのではないでしょうか。
2. 家族が食事をしているときはどうでしたか?
■Sさん: 人間の食べ物が残っても与えなかった
■知人: 時々残り物を一口あげていた
↑知人のご家族が以前飼っていた犬は、時々奥さんの手料理を与えていたので、塩分が高い食べ物でなければ、犬に一口あげていた、との事。物欲しそうにヨダレをたらしながら見つめるので、最後に一口、という具合で時々与えていたそうです。
これも「ボクが食べたいと思ったら、人間のご飯がちょこっともらえる!ラッキー」とロン君が思ってしまったのでしょうね。何が何でも与えるべきではなかったと思います。
3.爪きりや耳掃除・シャワーなどはどうしていましたか?
■Sさん: 耳掃除=週2回、爪きり=月2回、シャワー=月1回
■知人: 耳掃除・爪きり・シャワー=月一回ペットサロンで
Sさんはロン君を預けた知人宅の負担を減らすため、最低月1回のサロン代を事前に預け、サロンに連れて行ってもらうようにしていたそうです。多分ロン君はそのサロンで嫌な思いをしたのかも知れませんね。だから爪きり等が嫌いになってしまったのかも、と思います。
4.お散歩や運動はどうしていましたか?
■Sさん: 週1~2回、公園や広場で1~2時間自由に走らせた
■知人: 自宅の庭で(トイレのために)一日10分~30分位放すのみ
完全に運動不足ですね。まだ3歳との事で、元気盛りでもあるのに、いきなり2ヶ月近くもほとんど運動しない生活に激変していますので、たとえ毎日外に出ていたとしてもストレスは溜まります。(お庭は車が2台停められる位の広さだそうです)
5.犬が遊んで欲しそうなとき、どうしていましたか?
■Sさん: 忙しいときは無視、時々飼い主のペースで遊んであげた
■知人: 服の袖をひっぱってくるので「ロン君だめよ~」と言ったがしっぽを振って更に興奮していた
知人のご家族は、ロン君の体が大きかったので「遊んで~」と近寄ってくるとどうやってかわして良いかわからなかったそうです。特に遊んであげたつもりはないとの事でしたが、しっぽを振って興奮しているというのは、犬は「遊んでる」と思っています。
* * *
ということで、お友達ご家族に預けていた間、ロン君の中では「僕がしたいことはしてくれる家族だ!」と思ってしまったのではないでしょうか?ちょっとだけ、自分が王様みたいな気分です。
だからSさんの家に戻って今までどおり接しようとすると、ロン君は気に入らない。気に入らないけどSさん家族はもともと厳しかったため、ロン君は飼い主さんの厳しさを気に入らず、噛むようになってしまったように感じます。
これは、直すのはちょっと時間がかかりますね。ロン君はわがまま犬になってしまっているので、そこを直しましょう。噛むのを直すのは、原因を取り除かないと治らないです。
【無視期間】
まずは、Sさんご家族全員、ロン君を無視して下さい。食事やトイレの時だけ犬と接して、それ以外は無視です。ケージに閉じ込める必要はありません。家族が団欒しているときや食事している時なども、完全にロン君を無視します。キュンキュン鳴くかも知れませんが、声が聞こえてもロン君の顔を見たり、目を合わせたりしてはダメです。会話でロン君の名前を発言するのも止めてください。
とにかく、ロン君が鳴いても吠えても家族全員でロン君はいないものとして接してください。ロン君はだんだん自分がかまってもらえない事に気づき、注目され何でも思い通りになる王様ではないということに気づきます。1週間くらい徹底して厳しくしつけをしなおしましょう。
【命令期間】
しばらくすると、しょんぼり寂しそうにしてくると思いますが、何日か続けてください。そして、少しずつお座りや伏せなど服従させる命令でロン君と接する時間をプラスしていきます。ロン君がどの程度王様気分が抜けるかによって、命令期間の調節をします。
【元に戻す期間】
食事・トイレ・命令だけで接することにより、王様気分が抜けたら昔のように時々遊んであげます。爪きりなどをしてまだ噛んでくる様でしたら無視期間に戻ってください。
散歩はどの期間も以前のように週に1回、数時間リードをつけたまま外で運動させます。良い子にしていてもリードは必ずつけたままにします。ひっぱる犬の場合は犬のお散歩のひっぱり癖を参考にして直しましょう。
このしつけのしなおしのポイントは、Sさんご家族が全員行わないと効果がありません。誰か一人でも1分でも甘やかしてルールを破ったら成功しませんので、良く相談してがんばって直しましょう。それでも治らなかった場合は、短期で訓練学校に預けるのも一つの方法ですので、あきらめずに元のロン君に戻るよう頑張ってくださいね!