旅立ったクリームさんへ
いつもと同じ時間の朝。6:15頃だったかな。
クリームがモゾモゾしてる。
うーんくーちゃん、時間は完璧、でもおしい!今日は土曜日。もうちょっと寝かせてよ。
クリームをなでてそばで添い寝する私。
6:40頃。またモゾモゾしてる。
うん、わかった、喉渇いたんだよね、ごめんごめん、お顔のタオルも替えようね。
唇をめくって、奥歯と犬歯の間の歯のない所から見える舌にむかって、ドレッシングボトルからお水をちゅーっとかける。
クリームは、舌と顎を動かして、少しだけゴクンと飲む。
ちゅーちゅーちゅー、ごくん、
ちゅーちゅーちゅー、、、ごくん。
もういらなくなると、ごくんをやめる。
だから私もお水の垂れ流しになったらやめる。
顔半分が腫瘍で腫れ上がってしまったクリームは、だいぶ前から横になって眠ることができなくなっていた。
お腹をべったりお布団にくっつけて、うつ伏せになって腕もひれ伏すように伸ばしている。
頭を持ち上げる力は残っていないから、お口からこぼれたお水は全部下のタオルにしみ込む。
お布団とタオルの間にはビニールのトイレシーツがあるから、タオルがびっちょり濡れるだけでお布団にはしみない。
顎の下がびちょびちょのクリームに向かって
「はいくーちゃん、タオル綺麗綺麗しようね」
クリームの顎をそっと持ち上げて濡れたタオル類を素早く引きずり出し、あらかじめそばに用意して置いた乾いた綺麗なタオルを顎の下に敷いて、顎を載せてあげる。
「はーい綺麗綺麗、気持ちいいね」
いつもと同じ時間に、いつもと同じ手順。
でもその日、綺麗なタオルをしいてもらって一息つくと、クリームの息が荒くなった。
吐くような体の動き。
でも、何日も前から何も食べていないから、何も出ない。
この3日間はお水さえ、おしっこを数日もの間しなくても良い程度、すなわち体が生きるために最低限必要な量しか飲めていなかったから、お水も吐けない。
ぐっと体をのけぞるクリームを抱きしめて、
「大丈夫だよクリーム、うん、苦しいね」
って、頭を抑えてあげて。
次の瞬間、クリームは、もう息をしていなかった。
胸に耳を当てても心臓の音が聞こえなかった。
クリームの身体から、力が抜けていた。
「クリーム、クリーム、クリーム」って、言ったとおもう。
クリームが、死んじゃった。
私はクリームを抱きしめたまま、クリームにかぶさるようにして泣いた。
息をしなくなって、一分くらいしてから、左耳の下の顎と首の付け根が動いた。
息を吸おうとしていたのだとおもう。
クコッ クコッ クコッという音がかすかに聞こえて、のどが、三回だけ、動いた。
「クリームまだ生きてる!」
でも、息を吸い込むことはもうできなかった。
そして、今までに体験したことがない静寂が、私とクリームを包んだ。
クリームが、本当に死んでしまった。
2012/07/31のクリーム すごく良い顔しているでしょ、私の、大好きな写真。
食べられなくなっても、
ボールから自分でお水を飲めなくなっても、
立てなくなっても、
顔を持ちあげることさえできなくなっても、
クリームは、最後まで、粗相をしなかった。
2012/10/01
7月には、「9/23の誕生日まで、生きられない」と、
言われていた。
でも、クリームは頑張った。
2012/08/01
9/26からご飯を受け付けなくなって、
10/3には、牛乳さえ吐いてしまうようになっても、
それでも、お水だけで、
おしっこを出さなくてもすむ、ほんの少しのお水だけで、
10/6日まで生きました。
2012/08/12
10/6は、私たちが5年前にアメリカで結婚式を挙げた日。
2012/09/23のクリーム 10歳のお誕生日は雨で、東北自動車道羽生PAのトラックの駐車場で少しだけのご飯とクロワッサンを食べた
クリームは、自分の誕生日の9/23ではなく、
私たちの10/6の記念日まで生きてくれた。
痛くて、苦しかったはずなのに。
土曜は、朝、いつもの時間まで、私を寝かせてくれた。
6:15分に起きられなくて、二度寝までさせてくれた。
誰にも迷惑をかけずに、お布団をいっさい汚すことなく、
苦しみの声すら一言もあげることなく、
ひとくちのお水だけ私にもらって、
そのお水のちからで、
静かに、しずかに、旅立ちました。
やさしかったクリーム、あなたはもう、
不自由な身体から開放されて、
お花の咲く野原で、満面の笑顔でいるのかもしれない。
2011/04/11のクリーム
病気と戦っていた間のあなたの瞼から、
涙のように、しかし真っ赤な鮮血が流れ落ちたり、
最後の最後の最後、瞼に穴が空き、
お顔の筋肉や腐った腫瘍が見えるようになった
あの苦しみから開放されて、
ホッとしているかもしれない。
2011/09/12のクリーム
でもわたしは、
淋しくて、
悲しくて、
もう一度、
あのふわふわの大きな身体を抱きしめたくて。
あぁ、クリーム!
2011/09/25のクリーム
でも、いつもあなたが居たところに
あなたは横たわっていなくて。
金色にギラギラした包みに入っている灰が
あなただとは思えなくて。
2012/08/10のクリーム
闘病中、車で通ったお外で毎日聞いた6時のチャイム。
あなたがいなくなった今日も、変わらず同じ時間に外に響くチャイムを聞けばあなたを思い出し、
お庭の、いつもあなたがおしっこをしていた茂みを見ては涙があふれ、
いたたまれなくて、いつも歩いた外の道へ飛び出すと、
私を振りかえって見上げるあなたの姿がないことに
耐え難いさみしさが襲ってきて、
顔がくしゃくしゃになるほど泣いて。
2010/02/07のクリーム
いっぱい泣けば、少しは気がおさまるかとおもっても、
全然収まらなくて、思い出が次から次へとあふれ出て、
悲しすぎて、つらすぎて、声すら出ない。
こんなつらいことがあっていいの?
こんなにつらいことも、あるんだね。
2012/08/3のクリーム
どこを見ても、あなたとの思い出がいっぱい。
かわいいかわいいあなたの顔が浮かんでくるの。
きっと痛いはずなのに、
あなたの優しい眼差し。
2012/09/12のクリーム
あなたのあの笑顔。
あなたの曇りないまっすぐな気持ち。
あなたほど心から愛して、
あなたほど長く一緒に時間を過ごしたのは、
私の人生で、あなたが初めてだったの。
2012/09/26のクリーム
最初の旦那さんと別れて神奈川県の田舎から、
子犬のあなたを連れて東京で一人暮らしを始めたとき、
おしっこををせずにひとり待っているあなたが
心配で心配でたまらなかった。
2005/10/22のクリーム
神奈川では余裕の専業主婦で24時間一緒にいたけれど、
東京でバツイチ子犬付きの私が働くようになってから、
一人でお留守番のあなたは、
おしっこをしなくてもすむように、
あまりお水を飲まずに私の帰りを待っていてくれたよね。
2005/08/25のクリーム
仕事がうまくいかなかったり、悲しいことがあると、
私の手や涙をペロペロ舐めてくれたよね。
小さい頃から私があなたの手を握って育てたから、
手でコミュニケーション取るのが上手で、
小型犬にパンチして怖がられていたよね。
初めていまの旦那さんと暮らすようになったとき、
私があまりにあなたを可愛がるものだから、
最初はなんとなく今の旦那さんに煙たがられて、
彼がなんとなくあなたにイラついていたのを感じたけれど、
あなたはいつもニコニコして、
私たち二人を満遍なく愛して慕ってくれて、
いつしか彼にとっても、
あなたはかけがえのない家族になったね。
あなたが死んでしまったあと、
彼は声を出して泣いてしまったの、
あなたにもきっと聞こえたんじゃないかな。
2012/10/04 亡くなる2日前。食べることができなくなってから牛乳は飲むことができたけれど、この日は牛乳さえ戻してしまった。秋晴れの爽やかな朝のお外の空気を感じてほしくて、廊下に連れ出して一緒に午前中を廊下で過ごした。
2012/10/05 亡くなる前日の夕方。「ほらクリーム、遊水地だよ、土だよ、草だよ、わかる? 草の匂いだよ、わかる?」動けなくなって唯一残った片目も奥にひっこんで見えなくなってしまったクリームをおふとんごと連れ出して、真夏を毎日過ごした渡良瀬遊水地へ。
2012/10/05 具合が悪くなった最後の日から、二日ぶりのお外だった。草をむしってクリームの鼻のそばにもってきて匂いをかがせ(このときもうくんくんと匂いをかぐことさえ出来なかった)、おふとんから下ろしてクリームの腕を草の上にのばしてあげた。そしてこのお外が、クリームの最後のお外になった。
2012/10/05、クリームの亡くなる前日、クリームは遊水地にきたことがわかっただろうか。きっと、外の匂いを感じてくれたに違いない。いつも会う犬を連れたおじいさんもいたから、「クリーム、わんこちゃんのおじいさん、きてるよ。わんこちゃんも、いるよ」って教えてあげた。家に帰ると私の妹がクリームに会いにきてくれた。クリームはこの日、久しぶりにお外の空気や草の匂いに触れられ、妹になでてもらい、安心したのかもしれない。
2002/11/06 私と出会う前のクリーム
2002年9月23日に生まれたあなた
2002年11月12日に私と出会い
2012年10月6日に私の腕の中でその命を閉じました
2012/10/06 最後の最後まで、優しい良いお顔のクリーム隊長
いろいろあったけれど、クーさん、幸せだったかな
最初にあなたを迎えた頃、いろいろわからなくて、
イライラしたり、なめられちゃいけないと変に飼い主ぶって
えらそうにしつけしてごめんね。
去年2011年は、一年の半分を海外にいっていたから、
さみしい思いをさせちゃってごめんね。
今年2012年は一緒にって思ったけれど、
1月からポートランドに半月、帰国して3日後にグアムへ1ヶ月。
やっとゆっくり一緒に居られると思ったら、
4月にもあなたをおいて、石垣島へ。
2012/04/10のクリーム
もう、僕はいらないのかなって思っちゃったかな。
5月の前に、本当にひどい下痢をしてしまって。
きっとその時にあなたの免疫機能が壊れてしまって、
ほっぺたの腫瘍ができてしまったんだよね。
どんなに後悔しても、しきれない気持ちだよ。
寂しい思いをさせて、ほんとうにごめんね。
こんな飼い主だったのに、最後の最後、痛かっただろうに
そんな雰囲気はひとつもみせずに私の記念日まで生きてくれて、
ほんとうにありがとう。
2012/06/22のクリーム
犬なんて自分で飼った事もないどうしようもないダメ飼い主だったけれど、
あなたは私に色々なことを教えてくれたね。
あなたが教えてくれた事を、このホームページで他の人にもたくさん伝えたよ。
そして、たくさんの人から、あなたへ、私へ、メッセージをもらうこともできた。
2010/02/07のクリーム
くーちゃん、あなたは本当にすごいワンコさんだった。
ありがとうね。
2012/03/06のクリームと母
いまわたしは、さみしくて悲しくてすごく落ち込んでいるけれど、
やがて復活して、
もう少し人間の人生を歩んで、
いつかあなたの待つその世界へ向かいます。
それまで少し待っていてね。
次にあったら、ハグして、いっぱい遊ぼうね。
2012/06/25のクリーム
P.S. あなたに買った車、あなたの大好きだった社長車、あなたが亡くなったらすぐに売ってしまう予定だったけれど、あなたとの思い出と一緒に、もう少し乗ることにしました。次は新車が買えるように頑張るから、見守っていてね。
2012/07/29のクリーム
クリーム、ありがとう。大好き。
ありがとう。
ありがとう。