ラヴェル/ボレロ 小太鼓
最近クラシックなボヤキばかりで申し訳ないんですが、また音楽のお話です。
ラヴェルのボレロはご存知な方が多いかと思います。大変有名な曲です。(サンプルを聴いてみる=サンプルも初めの方は音が弱く聞こえないくらいです)
ボレロは初めにPP(ピアニッシモ=できるだけ弱くの意味)で始まり、15分位かけてFF(フォルテッシモ=きわめて強く)で終わります。旋律は単純で二つの旋律をじっくりと9回繰り返して終わります。
上記がボレロの旋律(上段)とリズム(下段)です。
15分かけて「弱く」→「強く」という楽曲はラヴェルのボレロ以外ないのではないでしょうか。ラヴェルがこの曲を初演した当時、演奏終了後に「このキ○チガイ!!」という罵声が飛んだそうです。わかる気がします。人の神経の微妙な所に抵触する音楽です。
数年前、私はこの曲のコンサートを聴きに行きました。 CDではわからない、臨場感と会場の抑揚を肌で感じ、大変感動したのを覚えています。
何がすごいって、小太鼓をやっている人です。「じ~んせい 楽ありゃ 苦~もあっるさぁ~」という水戸黄門の音楽に似たリズム(上図二段目の音符)を、15分かけて、PPからFFまでオーケストラ楽団を導くのです。(そんな時間かけるなよ!)
曲が終焉に差し掛かると、演奏会場に来ている人たちのほとんどの視線と注目は小太鼓に集まります。小太鼓を演奏している人も一人で15分近く打っていると、熱くなり、曲の終焉頃には全身全霊で演奏します。
演奏が終わると会場全員が拍手の嵐です。演奏していたオーケストラ全員も総立ちになり会場にあいさつをします。
大抵、オーケストレーションされている曲が終わると、第一バイオリンの一番左にいる人(コンサートマスター)がオジギをします。でも、ボレロの時は違いました。
まず立ち上がったのは小太鼓演奏の人でした。たった一人で15分間、指揮者のように演奏曲にリズムを与えていた人です。オーケストラ演奏で、普段なら脇役な小太鼓奏者がこの時は皆の拍手を受けて最初に何度もおじぎをしていました。
会場の全員が15分間、彼から目を離しませんでした。そして大喝采。生のクラシックは、そういうのが凄いです。
忍耐力がないと耐えられない音楽ですが、大変すばらしい音楽です。デュトワ指揮のボレロが最高です。カラヤンもイイですが、ラヴェル音楽はデュトワかなぁ、という好みの隊長の部下です。